ロタウイルス胃腸炎とロタワクチン

ロタウイルス胃腸炎は古くから知られているウイルス感染症です。
30年以上前は、その激しい下痢、米のとぎ汁のような白色便から、「小児仮性コレラ」と呼ばれた時代があります。
1973年、十二指腸の生検で、電子顕微鏡で初めてロタウイルスが発見されたとき、ウイルスの粒子が車軸様に円形を呈していたことから、rota(ラテン語で、車軸:という意味)ウイルスと命名されました。

ロタウイルス胃腸炎を発症しますと、激しい下痢、水分摂取の低下などで脱水症が起こることが多く、乳幼児期には輸液だけでなく、入院を必要とすることも少なくありません。

ロタウイルス胃腸炎を経験した中で印象深い症例があります。

私が小児科クリニックを開院した直後の冬のことでしたが、ロタウイルス下痢症の児が午前中来院されました。その時は機嫌もよく、ミルクもしっかり飲んでいましたので、水分摂取のことや、繰り返しのおう吐のことなど注意すべきことを説明して帰宅していだだきました。ところが、当日の診療の終り頃に「元気がないから」といって再来院されました。

一目見て重症の脱水症に陥っておりましたので、緊急に輸液を開始しました。お母さんの話では「ミルクも飲んでいて、嘔吐もなかったのでこれでいいと思っていた。」とのこと。
でも実際は、接取する水分以上に下痢で失う水分と電解質喪失の方がバランス的にきわめて多かったために、重度の脱水症と代謝性アシドーシスを呈しており,動かせる状態ではありませんでした。当時N病院にいた小児循環器科のK先生に電話して、「1時間かけて、アシドーシスなど補正して、救急車での搬送に耐えられる状態になってから搬送します」と連絡してから、私とナースが救急車に同乗して搬送、無事合併症もなく軽快した例がありました。

このように、ロタウイルス腸炎は朝元気でミルクを飲んでいても夕方にはぐったりして、緊急に輸液や入院が必要となるケースが少なからずあります。

ロタウイルス胃腸炎は2歳までには1度は発症する病気です。初回の感染時は症状は重い傾向にあり、2回目の感染、3回目の感染になるにつれて症状が軽くなりますが、脳炎、急性腎不全などの重篤な合併症を引き起こすこともあり、けっしてあなどれない、注意が必要な病気です。

ワクチン接種のスケジュールでご質問のある方は、母子手帳を持参していただければ、各自に合ったスケジュール例を提示いたします。あらかじめ、受付にお電話ください。

ロタウイルスワクチンが定期予防接種に

令和2年8月1日生まれの赤ちゃんから、ロタウイルスワクチンを定期予防接種として受けることができます。これまで任意ワクチンの接種により、ロタウィルス下痢症で
重症化する例が少なくなってきていましたが、定期予防接種になることによって、さらに重症例が少なくなることが期待されます。