インフルエンザワクチンの話(ブレイクタイム)

インフルエンザワクチンは、予防接種をすることによって必ずしも感染を防ぐことができるわけではありませんが、脳炎、脳症などの重症化を防ぐことが期待できます。
もちろん、現在インフルエンザワクチンの接種は推奨されています。

さらに生後間もない乳児のいる家庭では、まわりの家族が接種することにより乳児に感染することを防ぐ方法が勧められています。

ところが、インフルエンザワクチンの効果を否定する事態が約20年前に起こりました。

約20年前までは学童のインフルエンザワクチンの集団接種がおこなわれていましたが、1987年に「集団接種をしても集団免疫は期待しえない」という発言があり、一部の新聞は「学童の予防接種を中断しても地域におけるインフルエンザの流行や、学校内の感染拡大の危険を増大することはない」という記事を記載しました。このようにインフルエンザワクチンの予防効果を疑問視する報告があり、1994年に集団接種は中止されました。
その後インフルエンザワクチンは任意接種のみとなり、接種する人は激減しました。

その結果、1990年代に約800名もの幼児(1~4歳)がインフルエンザで死亡しました。また多くの高齢者のかたもインフルエンザで亡くなられました。
これは明らかに、学童集団接種中止が原因であるとされ、再びワクチン接種が推奨されることとなりました。

ちなみに米国はかつて日本でおこなわれていた学童集団接種を高く評価し、インフルエンザワクチンを学童全員に接種する方向で計画を進めています。

医学はめざましく発展していますが、その一方で、昨日までの常識が今日は非常識になっていくことがあります。今後も最善の医療が提供できるようアップトゥデイトな情報を収集し日常診療に活かしたいと考えます。